日本経済新聞
2022/4/22 朝刊一面

①「日立、日立物流売却へ KKRに優先交渉権 買収額6000億円 グループ再編完了」

日立製作所は、アメリカの大手投資会社であるKKRに対して日立物流を売却する方針だと報じられました。現在4割保有している株式の3割を売却する予定だといいます。TOBの実施が予定され、ある程度のプレミアムも付きそうです。

2009年に当時、過去最大となる連結赤字を計上した日立グループの、ITを軸に進めてきた再編計画が、これにて完了するとのことです。

日立は、2021年に、アメリカのIT企業グローバルロジックを1兆円で事業買収し、日立の営業部隊と、グローバルロジックのエンジニア連携させ、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を進める計画を進めていきます。


②「第4の革命 カーボンゼロ ロシア対策、動く欧州 エネ安保、再構築の時」

ロシアに対する制裁などによって、原油や天然ガスなどのサプライチェーンがひっ迫した事などから、こうした有事の際にエネルギー源の調達をどのように担保するかというエネルギー安全保障が、各国の課題となっています。

一時的には石油や天然ガスよりもCO2の排出が多い石炭を増産する国もあるでしょうけれど、原油や代替調達先の確保だけでなく、燃料を他国にたよらない、脱炭素エネルギーへの移行も課題です。これを機会に、長期的になエネルギーの脱炭素化が加速すると見られます。

イギリスのように太陽光および原子力発電の発電量を増やしたり、ドイツのように再生可能エネルギーへの投資を前倒しするというような長期的な施策が次々に発表される中、日本は若干出遅れているように思われます。

日本は2030年までに、再生可能エネルギーの比率を40%まで引き上げる目標を掲げていますが、実現可能性には疑問があります。日本の場合は、地続きの隣国がないので、ヨーロッパのように他国との電力の融通というのは効率がよくありません。豊富な水源を活かした水力発電や、土地の特性を活かした、風力や太陽光、地熱発電など、燃料に頼らない発電に力を入れてほしいと思います。


③「ロシア「マリウポリ掌握」 ウクライナ「自軍残り抵抗」」

攻略に難航した首都キーウから撤退させた部隊を、「ネオナチ組織」と敵視する「アゾフ大隊」が拠点とするマウリポリに集結させた包囲網を敷いたロシア軍は、ついにマウリポリをほぼ陥落させ、東部ドンバス地方の完全制圧に向けて大きな一歩を進めました。

ゼレンスキー大統領は、東部の戦線も放棄せずに戦う姿勢を見せていますが、西側諸国の受けている副作用から考えると、一体だれが得する戦争なのか、いよいよ分からなくなりました。

経済制裁も、十分な効果を得られないことが分かりました。

ヨーロッパは脱ロシアのエネルギー政策を進めますが原油や天然ガスに関して足並みが揃うことはありません。天然ガスの購入費用はルーブル払いを求められました。SWIFTから排除されていないガスプロムで外貨がルーブルに両替されて支払されるので、ルーブルは侵攻前の水準に買い支えられています。

中国はじめ大半の国は対ロシア制裁の抜け穴としてモノとカネを流し続けています。この状況を予想してのことでしょうか。もはやアメリカ一人勝ちのこの戦争において、EU諸国の行政、市民の胸中はいかがなのでしょうか。


④「今国会で補正予算 政府、ガソリン補助上限35円案」

2022年度の補正予算案は、コロナ禍で創出し放出した予備費のさらなる積み増しや、緊急の物価高対策の財源として提出され、約2.7兆円の規模になると明らかにされました。

予備費は、コロナ前に毎年5000億円、約10兆円ほどの残高がありましたが、コロナ禍中の2020年度の補正予算案でいきなり約10兆円の予算がつきました。そして一年間で12兆円ほどが支給されましたが、実はその使途についての大きな懐疑があります。

柔軟に使えること自体に大きな意義があるとはいえ、その用途が自治体や民間組織に一任される仕組みになっているのでは、バラマキに乗じた焼け太りが起こりそうなことは誰でもわかるはずです。今は確実に、コロナ禍中とは状況が変わっていると思います。まして、コロナ禍のダメージを効果的に癒し、また最大限、回復の助けになるよう、使途にたいしてしっかり監視の目を光らせるべきだと思います。


【社説】
G20の亀裂を協調の停滞につなげるな
南太平洋で高まる中国の脅威