日本経済新聞
2022/4/14 朝刊一面

①「円、20年ぶり安値 一時126円台 資源高、資金流出続く 消費に打撃の恐れ」

13日、ついに円が一時126円台まで下落しました。アベノミクスの円安株高政策でも、125円台を突破することはありませんでした。きっかけは、黒田総裁の「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」という発言で、金利の引き上げが当面ないと予測されたことです。

この、約20年ぶりの安値ラインを超すと、次のレジスタンスは130円ですから、トレンドとしては、ますますそこへ向かっていくのでは、と思います。

経済構造からも、円売り圧力がかかりやすくなっています。

・貿易収支の赤字転換
日本の貿易収支は年々赤字傾向にあり、2003年に兆6.5兆円であった黒字が、21年には2.5兆円の赤字となっています。
貿易と金融を合わせた「経常収支」すら、2022年に遂に赤字に転落する可能性がささやかれています。他国のものを買うためには円を売って外貨を買わなければならないため、どうしても円売り圧力が増します。

・生産拠点の海外への移動
企業の海外生産比率は2002年には17.1%でしたが、2019年には23.4%に拡大しました。国内からの輸出ではなく、海外拠点から直接現地の消費に回る傾向が強くなったため、円安によって海外への輸出が好調に転じるという効果が薄れています。また現地法人からの配当はそのまま外貨で再投資にまわる傾向も強くなっているため、より、円が買われにくくなっているとも指摘されています。


経常利益に対する円安の効果を表す「為替感応度」は1円円安になるごとに、0.43%と、過去に比べると低くなっています。なると、原油高からくる企業物価の上昇によって中小企業の業績悪化がおこり、個人消費が低迷するという効果の方が強くなってしまいますね。


こうした構造的な円安圧力が強くなると、日銀の介入の効果も効果が得にくくなるでしょうし、そもそも円安になっても物価の上昇がみられず、物価があがるまでは緩和を続け、それによってさらなる円安が引き起こされるという事態、これをどのように解決すればいいのかという迷路に迷い込んでいるのではと思います。。

貿易赤字の主因として、原子力発電所の停止によるエネルギー輸入の増加を指摘する専門家もいるようです。ロシアに対する制裁、それに続くエネルギー高、、、いまだに、エネルギー輸入国の日本が今後とるべき道筋は見通しが良いとは言い難そうです。


②「韓国新政権、クアッド首脳会合に出席打診 日本で開催へ 日米との首脳会談探る」

「Quad(クアッド)」は、日米豪印が、中国抑止を念頭においた4ヵ国の枠組みです。

5月下旬に、バイデン大統領が来日するのに合わせて、クアッドの首脳会合が開催予定となっていますが、今回、韓国の伊大統領が、オブザーバーとして参加する方向性が明らかになったようです。伊大統領は、文大統領時代に悪化した日韓関係の改善を表明しており、アメリカもそれを促しています。

今回の首脳会談でも、インド太平洋地域で覇権主義的な動きを強める中国への対処、協力についての協議を行うでしょう。特にロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁の行方によっては、米中関係も大きな節目を迎える可能性がありそうです。クアッドはあくまで安全保障の枠組みではありますが、経済制裁が抑止力となるかどうかも焦点ではあるので、インドの中国やロシアとの経済的な接近にどれだけ踏み込めるかが注目される気がしています。


③「SMBC日興元副社長らを起訴 東京地検、捜査終結」

SMBC日興証券の相場操縦事件によって、東京地検特捜部は13日、元副社長を起訴しました。これによって、事件の捜査はいったん終結しますが、金融庁は、行政処分に視野に入れ、社内の管理体制などの検査を引き続き行うと見られます。

「ブロックオファー」の取引銘柄を不正に買い支えたとして訴えられているわけですが、被告は日常業務の範囲内、として容疑を否認しています。日常的に行っている業務が相場操縦にあたるのかあたらないのか、という争点になるとすれば、証券会社の業務と言うのはそもそも何なのか、という議論も必要になるのではと思います。


④「ロシアからの輸入、エネ高騰で拡大 中国26%、韓国44%増 制裁の弱点に」

ウクライナ侵攻に対する経済制裁の効果を担保するためには、対ロシアの輸出入に対して国際的な協調が必要となりますが、足並みはなかなな揃っていない様です。

中国税関が公表した貿易統計によれば、ロシアからの輸入額は前年同月比で26%増えました。また中国だけでなく、制裁に協調しているはずの韓国や台湾も同様に輸入額が増えているということが驚きです。

欧米はロシア産のエネルギー輸入に積極的な国が多い反面、アジアの国は、エネルギーについては輸入規制の対象になっていません。日本も、石炭に関しては禁輸の方向性を示しましたが、石油や天然ガスについては保留中です。

もちろん中国が、アメリカやオーストラリアに資源調達の依存を高めたくないのは当然ですが、国際的な原油市場の高騰のなかで、ロシアが割安な原油の供給を提案し、他のアジア各国はその受け皿になった可能性が高いと思われます。

このまま、資源輸出が堅調に伸びれば、ロシアは容易に外貨獲得できることが証明されるかもしれません。国際金融協会(IIF)によれば、ロシアは、エネルギー禁輸がなければ、2022年に年間で2500億ドルもの経常黒字を得る可能性があると言います。


【社説】
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