日本経済新聞
2022/4/3 朝刊一面
①「チャートは語る 強権中国、戸惑うマネー 7400億円流出 「ロシア売り」二の舞危惧」
2022/4/3 朝刊一面
①「チャートは語る 強権中国、戸惑うマネー 7400億円流出 「ロシア売り」二の舞危惧」
タイトル通りですが、中国から投資マネーが逃避し始めたと言います。
ウクライナに侵攻したロシアに対する経済制裁、および、ロシアの通貨と証券が暴落したことを受けて、中国のような強権的な政治・外交体制の国に対しての投資を見直す動きが広がっていると指摘されています。中国以外の新興国ではそうした動きは見られず、まさに異例な出来事だというのが国際金融協会(IIF)の分析です。
2022年の1~3月の外国人投資家による売り越し額(買われた額よりも売られた額が上回った金額)は、中国の債券・証券合わせて約384億元(7400億円)ともなりました。特に3月の流出は451億元。ウクライナへの侵攻が開始してからはっきりと流入基調がストップしました。
約7年間ほぼ安定して買い越しが続いていたなかで、外国人投資家が中国に向ける目は大きな転換点を迎えたとみる専門家もいるようです。
近年、アメリカと中国のマネーの「相互依存」は非常に高まってきました。
・中国 ⇒ アメリカ
2.12 兆ドル
・アメリカ ⇒ 中国
1.2 兆ドル
合計3.3兆ドルの証券・債券が相互に保有されています。このマネーの逆流が大きな流れとなれば、世界に非常に大きな影響を与えることは必至です。
米中間のマネーの「デカップリング(分断)」はすでに2016年から顕著だったと分析されています。中国政府が対外投資への審査を強化することによって、アメリカ企業に中国資本企業が買収されるケースが激減しました。またアメリカも、米国資本が中国企業へ投資することへの規制を強めています。
話はややこしいですが、「直接投資」と「証券投資」という違いを考えると良いかと思います。相互保有するマネーは量の面では確かに流入してきましたが、それは「証券投資」として配当や売却益をねらう投資運用のマネーのこと。例えば株式の10%を超すような「直接投資」のような支配力の高い投資はお互いに規制を高めて、分断のダメージを抑えるようリスクを控えてきた、と言えばわかってもらえるでしょうか。
米中がお互いに大きく依存しない、独立した経済圏の形成を目指す姿勢が見て取れます。このまま更に、量的な相互依存すらも分断に進んでしまえば、世界経済に及ぼす影響や損失は計り知れまないと専門家は危惧しています。
②「自社株買い7割増、昨年度8兆円 成長投資に回らず」
日本の上場企業による自社株買いが加速しています。前年度比7割増となり、8兆円超に上ると言います。
自社株買いとは、書いて字のごとく、上場している株式を自社で買い取ることですが、複雑な問題をはらんでいます。企業が発行した証券を企業が高値で買い取るため、売却益や株価の上昇から「株主還元(実質上の配当)」とみなす考え方が主流ですが、勿論ことはそう単純ではありません。
【企業側メリット】
・株主が企業価値を評価するROE・PER・PBRなどの指標が改善するので、より魅力的な投資先に見えやすくなる。
・ストックオプションとして社内のインセンティブに利用できる
・敵対的買収に強くなる
・企業合併や企業買収の際に、現金の代わりに自社株を交換することで、現金を調達する負担が減る
【企業側デメリット】
・他者から株を買い取ることになるので、キャッシュフローが悪化する
・キャッシュと株式を交換することで資産が縮小し、自己資本比率が低下する
・上記2点から、BSを慎重にコントロールしなければ、むしろ企業評価が下がる可能性がある
【投資家メリット】
・ROE・PER・PBRなどの指標が改善するので、より買われやすくなり、株価が上がる。
【投資家デメリット】
・株主が利確に走れば、株価が乱高下して市場が混乱する
・せっかく調達したお金を、事業に投資していないということは、今後の成長があまり見込めないのではと市場に判断され、株価が下がる可能性もある
ボリュームが多くなりました。。
リーマンショックで株が急落したとき以来に自社株買いが進んだだけに
その中で、今回のトピックとなる理由は2点
・東証再編によって特定の大株主の株を買い取り、市場に流動性をもたせる必要があった。
・資金を投資する対象である成長事業を、なかなか見い出せずにいる傾向が強い。
21年6月に改定されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)では、企業同士による株の持ち合いが株式の流動性を妨げ、経営の不健全化につながっているなどの事から、持ち合い解消を求めています。それによって今後も更なる自社株買いが進むと見られています。
もともとキャッシュが潤沢と言われる日本の大企業。コロナ禍からの復活によって利益水準を少しずつ回復させている企業は少なくありません。こうして自社買いによる株主還元を経て、次に目指すところは何処にあるのでしょうか。
アクティビストファンドの注目点は企業の成長を通した利益の追求でしかなく、日本の経済そのものに対しての本来の配慮は望むべくもありません。もちろん経営の透明化は必要なことですが、それらを通して、日本の国民がどのような恩恵を受けるのかという視点を忘れないようにしたいです。
1.2 兆ドル
合計3.3兆ドルの証券・債券が相互に保有されています。このマネーの逆流が大きな流れとなれば、世界に非常に大きな影響を与えることは必至です。
米中間のマネーの「デカップリング(分断)」はすでに2016年から顕著だったと分析されています。中国政府が対外投資への審査を強化することによって、アメリカ企業に中国資本企業が買収されるケースが激減しました。またアメリカも、米国資本が中国企業へ投資することへの規制を強めています。
話はややこしいですが、「直接投資」と「証券投資」という違いを考えると良いかと思います。相互保有するマネーは量の面では確かに流入してきましたが、それは「証券投資」として配当や売却益をねらう投資運用のマネーのこと。例えば株式の10%を超すような「直接投資」のような支配力の高い投資はお互いに規制を高めて、分断のダメージを抑えるようリスクを控えてきた、と言えばわかってもらえるでしょうか。
米中がお互いに大きく依存しない、独立した経済圏の形成を目指す姿勢が見て取れます。このまま更に、量的な相互依存すらも分断に進んでしまえば、世界経済に及ぼす影響や損失は計り知れまないと専門家は危惧しています。
②「自社株買い7割増、昨年度8兆円 成長投資に回らず」
日本の上場企業による自社株買いが加速しています。前年度比7割増となり、8兆円超に上ると言います。
自社株買いとは、書いて字のごとく、上場している株式を自社で買い取ることですが、複雑な問題をはらんでいます。企業が発行した証券を企業が高値で買い取るため、売却益や株価の上昇から「株主還元(実質上の配当)」とみなす考え方が主流ですが、勿論ことはそう単純ではありません。
【企業側メリット】
・株主が企業価値を評価するROE・PER・PBRなどの指標が改善するので、より魅力的な投資先に見えやすくなる。
・ストックオプションとして社内のインセンティブに利用できる
・敵対的買収に強くなる
・企業合併や企業買収の際に、現金の代わりに自社株を交換することで、現金を調達する負担が減る
【企業側デメリット】
・他者から株を買い取ることになるので、キャッシュフローが悪化する
・キャッシュと株式を交換することで資産が縮小し、自己資本比率が低下する
・上記2点から、BSを慎重にコントロールしなければ、むしろ企業評価が下がる可能性がある
【投資家メリット】
・ROE・PER・PBRなどの指標が改善するので、より買われやすくなり、株価が上がる。
【投資家デメリット】
・株主が利確に走れば、株価が乱高下して市場が混乱する
・せっかく調達したお金を、事業に投資していないということは、今後の成長があまり見込めないのではと市場に判断され、株価が下がる可能性もある
ボリュームが多くなりました。。

リーマンショックで株が急落したとき以来に自社株買いが進んだだけに
その中で、今回のトピックとなる理由は2点
・東証再編によって特定の大株主の株を買い取り、市場に流動性をもたせる必要があった。
・資金を投資する対象である成長事業を、なかなか見い出せずにいる傾向が強い。
21年6月に改定されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)では、企業同士による株の持ち合いが株式の流動性を妨げ、経営の不健全化につながっているなどの事から、持ち合い解消を求めています。それによって今後も更なる自社株買いが進むと見られています。
もともとキャッシュが潤沢と言われる日本の大企業。コロナ禍からの復活によって利益水準を少しずつ回復させている企業は少なくありません。こうして自社買いによる株主還元を経て、次に目指すところは何処にあるのでしょうか。
アクティビストファンドの注目点は企業の成長を通した利益の追求でしかなく、日本の経済そのものに対しての本来の配慮は望むべくもありません。もちろん経営の透明化は必要なことですが、それらを通して、日本の国民がどのような恩恵を受けるのかという視点を忘れないようにしたいです。
③「ロシア軍、キーウ近郊の空港から撤退 マリウポリ住民 3000人脱出」
呼称が「キエフ」から「キーウ」に変更になりましたね。ぼくも「キーウ」と呼ぶようにします。
マウリポリの人道回廊が機能していないという報道が続いていましたが、4月1日には3000人以上の住人が脱出に成功したと伝えられています。赤十字国際委員会では2日にもまた退避支援を再び試みるとしています。
ところが、どうやらこの3000人と言うのは、自力で脱出した市民とみられるようです。。十数万人の退避が進んでいない現状で、その市民がこうして包囲によって身動きをとれずにいると想像するだに、胸が締め付けられます。
キーウからの撤退が報じられるロシア軍も、迂回して東南部の援護に回ったとすれば決して事態が改善したと言えません。まずは一刻も早くマウリポリからの脱出を達成するように、両軍にたいして望んでいます。
呼称が「キエフ」から「キーウ」に変更になりましたね。ぼくも「キーウ」と呼ぶようにします。
マウリポリの人道回廊が機能していないという報道が続いていましたが、4月1日には3000人以上の住人が脱出に成功したと伝えられています。赤十字国際委員会では2日にもまた退避支援を再び試みるとしています。
ところが、どうやらこの3000人と言うのは、自力で脱出した市民とみられるようです。。十数万人の退避が進んでいない現状で、その市民がこうして包囲によって身動きをとれずにいると想像するだに、胸が締め付けられます。
キーウからの撤退が報じられるロシア軍も、迂回して東南部の援護に回ったとすれば決して事態が改善したと言えません。まずは一刻も早くマウリポリからの脱出を達成するように、両軍にたいして望んでいます。
④「対ロ制裁「参加国拡大」 ハイテク輸出規制で米高官」
アメリカのケンドラー商務次官補は、ロシアに対するハイテク製品の輸出に対して厳しい制裁を継続する考えを述べ、関係各国にも水面下で参加を促していることを示唆しました。半導体などの製品に対する対ロシア輸出規制はすでに33ヵ国に導入され、アジアのシンガポールなどを加えることで、制裁の実行力を高めたい狙いです。
また同時にアメリカは、ハイテク覇権を争う中国に対しては厳しく言及しました。中国は、半導体受託生産最大手である「SMIC」などの巨大ハイテク企業の拡大によって、半導体の自給率を着実に引き上げています。これをアメリカは非常に警戒しています。
中国やロシアに対しては今後さらに、実用化前の進行技術の流出に対しての規制を強化すると見られ、日本に対しても、連携の強化を求めています。
しかしながら、自給率を高めるということは、相互依存を解消し、圧力の効果を薄める狙いがあるという事です。「デカップリング」とも関係してきますが、結びつきが薄くなれば、圧力がかけにくくなるわけなのですが、このバランス感覚は、難しいかじ取りを求められそうです。
【社説】
「男性の育休」を古い働き方変える契機に
金融を深く学ぶ環境整えよ