日本経済新聞

2022/3/2
①「ロシア、信用危機に直面 債務不履行や銀行不安 G7「制裁、さらなる行動」」
②「ロシア軍、主要都市で民間人攻撃 大量破壊兵器も使用か」
④「停戦仲介を中国に要請 ウクライナ外相」

欧米日の金融制裁によって、ロシアの経済がダメージを受けるだけでなく「信用危機」に直面しているといいます。対外債権(国債や社債という"債券")のデフォルトリスクの高まりが指摘されています。ロシアという国全体(国と企業)で外国に対して負っている負債は5,000億ドル弱となります。しかしながら、この債務の返済が滞るもしくは貸し倒れしうるのでは、という懸念が広がっています。

海外資産の凍結によって外貨でルーブルを買い支えも出来ない状況に加え、各国はロシアの債権を購入することを規制されているため、借り換えも難しい状況で、未償還の残高の期限は停止することなく近づきます。債券のうち大半を占める社債ですが、そのうち3割弱の1,350億ドルが満期を迎えます。国債についても同様に、大きな償還が4月に待っています。これらのリスクが破裂したとき、はたして関係修復は可能なのでしょうか?ぼくには想像がつきません。。

経済制裁はロシア経済に対して大きな打撃を与えることになるでしょう。しかし、それによって各国の経済がうけるダメージもまた同様に大きいことは疑いようがありません。厳しい制裁によってロシアが決着を急ぎ、かえって軍事行動の先鋭化を招くおそれもあるわけです。

実際ロシアは、はじめのうちは民間人の被害を出さぬようにしていたかもしれませんが、しだいに民間施設への砲撃や、国際条約で規制されている、大量破壊兵器の使用も報じられるようになりました(ロシアは否定していますが)。今朝の報道では、第二の都市ハリコフの市庁舎への爆撃の映像が確認されました。ウクライナ政府によれば少なくとも10人以上の犠牲者がでたと言います。

たしかに、ウクライナのキエフ防衛は予想を上回る戦果を挙げたのかもしれません。しかしながら、ロシアが民間人に対して無差別な攻撃を始めれば、その被害の大きさを見過ごすことはもちろん出来なくなりますし、防衛すること自体の難易度も高くなるでしょう。ロシア軍の軍事行動はますます苛烈になり、アメリカ国防省の分析によれば、数日以内にはキエフが陥落する可能性が高いともされます。すでに136人の民間人(うち13人が子供)が犠牲になったと発表されています。


③「日米などIEA加盟国、石油協調放出へ 6000万バレル」

国際エネルギー機関(IEA)は、日米などの加盟国が備蓄している石油の6,000万バレルを放出すると発表しました。これがどれほどの量なのかというと、世界では毎日1億バレルが消費されていると言われているそうで、正直どれくらいの効果があるのかは不明です。先物価格の急騰は防ぐねらいがあるとは考えられます。


⑤「東芝・綱川社長が退任 トップ交代で戦略再構築 後任に島田氏」

3社分割から2社へと方針転換したものの、株主からの反対が収まらずに混乱が続いていた東芝ですが、CEOの綱川社長が退任し、島田太郎執行役上席常務が就任したという事です。

分割案による成長性に疑問を投じられるなか、トップ交代で新しい戦略構想を立ち上げることで、株主との関係性を改めて築き直し理解につなげたいという考えがありそうです。


⑥「ウクライナ侵攻 危機の世界秩序(5)企業に迫る「政冷経冷」」

言うまでもないかもしれませんが、世界の企業活動がこの20年間のあいだに築いてきた結びつきは決して単純なものでありませんでした。海外に拠点を持つからといて、それは単なる安価な生産力・労働力によるコストダウンだけを意味するわけではなくなりました。

アメリカIBMが2000年代初頭に、自らを「グローバリー・インテグレーテッド・エンタープライズ(地球規模で統合されたひとつの企業)」と称したことにも象徴されるように、企業は知的資源をシェアし活用しながら発展していく、、という考え方が浸透しつつあったのです。国際的な投資に対するリスクの観念は薄れ、世界は一つになるかのように思える時代だったのかもしれません。そのなかで、ウクライナも「統合された」世界の一部と言えたのかもしれません。

そんな中で「チャイナ・プラス・ワン」というのは、中国に設置した工場に加え、第三国にも工場を設置してリスクヘッジを図る考えです。地政学リスクを考えた時に、いくらコストが安かろうと、生産力を中国一国に頼るのはリスク管理上、不健全だというアラートがならされたのは、2012年の尖閣問題だったといいます。海外(中国)拠点からの輸出は抑え、なるべく生産国の内需向けに充てるようにシフトしていきました。いまでは「チャイナ・プラス・10%」と言われ、自国への輸入は10%以内に抑えようというほどに至ったのです。

これまで日中関係は「政冷経熱」と言われ、政治の問題があっても経済とは別問題という風潮がありました。しかし今や「経冷」が目の前に迫ります。力による現状変更がロシアによって、今まさに行われようとしています。中国が台湾に攻め入ったら、、という懸念はいつ現実のものとなってもおかしくありません。「企業にとって有事を口にすることはもうタブーではない」と紙面は締めくくっています。



【社説】
ロシアから退く石油メジャーの重い決断
サイバー攻撃へ警戒強めよ