日本経済新聞
2022/2/26 朝刊一面

①「ロシア軍、首都キエフ包囲 プーチン氏「停戦交渉の用意」 ウクライナに譲歩迫る」
-ウクライナ侵攻 危機の世界秩序(1)自由と強権、衝突鮮明に
-米、ロシア主要5行制裁 中国、ロシア小麦輸入拡大
-EU、プーチン氏の資産凍結へ ラブロフ外相も対象


ロシア軍はウクライナの各基地や空港の機能を制圧し、侵攻から間もなく、首都キエフを実質的に包囲し、プーチン大統領は、停戦交渉の用意があると述べました。ゼレンスキー大統領の退陣をともなう条件となれば、降伏勧告ともいえるこの呼びかけに対し、ウクライナ側が受け入れるかどうかはまだ見通せない状況だそうです。

またチェルノブイリ原発を占拠したことも報じられています。プーチン大統領は「ウクライナは核兵器を作ろうとしている」と主張し、侵攻を正当化する意図があると見られていますが、少なくともわたしの目には言いがかりとしか映りません。

報道時点で、民間人を含む137名の死亡が確認されています。またロシア国防省によれば、「ウクライナの特殊部隊を200名以上殺害した」とのことで、こうした面からもウクライナ国民にゆすぶりをかけ、降伏を促しています。ウクライナ国民は反ロシアの方が多いとも言います。ロシアは市民への被害をなるべく抑えるために、首都のキエフを包囲する形で停戦を呼びかけますが、そう簡単に降伏しないのではという見方もあるようです。

仮にすべてがロシアの思惑通りに運べば(←必ずしもそうならないと祈りますが)ゼレンスキー大統領はじめ親欧米派は一掃され、ウクライナはロシアの「かいらい政権」となるであろうと想像されます。親ロシア派の支配地域の完全独立や、クリミアをロシア領土として切り取られることも承認を迫られるでしょう。そして、NATOの非加盟こそが、今回の停戦合意の最大の焦点となりそうです。

ロシアは周到にここまで用意してきたようです。ドルから締め出されても耐えられるように独自の経済の逃げ道を持てるよう、中国とも接近してきました。ヨーロッパはむしろロシアからのエネルギー源への依存を高めてきました。経済制裁だけでは決定的な抑止になり得ていません。中国は台湾に対して「一国二制度」の約束を反故にし、また台湾を支援する日本を名指しで攻撃の対象となりえることを示唆したこともあります。日本の安全保障を考え直す必要は、言うまでもないのではないでしょうか。

このウクライナへの侵攻はまさに、冷戦崩壊後の秩序が完全にやぶれ、新たな時代に突入した出来事と言えると思います。またそれは、アメリカ主導の軍事的・経済的な秩序の崩壊でもあります。それを物語るように、アメリカの世論ではウクライナ問題に対して積極的に関与することを避ける傾向もみられるようです。いまやアメリカは世界の警察ではないし、まずは自国の経済が優先という風に思えます。少なくとも経済から見ても中国経済はすでにドルの覇権だけでコントロールが十分に及ばないところまで来ているのです。

国民が困窮しても強権的におさえつけることのできるロシアと、民主主義、自由主義とでは、こうした「いざという時」の覚悟に違いが現われるのだと、改めて思い知らさています。


②「塩野義、コロナ薬承認申請 軽症・中等症向け、初の国産飲み薬」

塩野義製薬は25日に、新型コロナウイルスの飲み薬について、厚生労働省に製造販売承認を申請しました。臨床試験(治験)を最後まで完了せずに実用化できる特例制度の適用によって早めの承認を求めているといいます。

ウイルス増殖に必要な酵素の働きを妨げる効果があり、初期段階に服用できれば、体内のウイルスが増殖し「感染した」状態になることを防ぐ効果が見込まれるようです。治験によれば、400人の感染初期の患者に1日1回服用させたところ、3回の投与の後、ウイルスの感染力を保った患者は10%未満だったそうです。


③「昨年出生数、最少84万人 コロナ拡大影響」

2021年の出生数が84万2897人だったと発表され、6年連続で過去最少を更新しました。死亡数は140万人と、逆に20万人増えました。それにより人口の自然増減は60万人となりました。



【社説】
過剰な介入控え経済安保の実をあげよ
出生急減に危機感をもっと