日本経済新聞
2022/3/23 朝刊一面

①ロシア発、建設コスト急騰 ビル用鋼材13年ぶり水準 設備投資延期や工事遅れも」

ロシア発の資源高を受け、建設資材価格が急騰している模様です。ビルや住宅の軸になる鋼材、木材やセメントなど多くの材料が含まれます。原料価格の高騰はウッドショック・メタルショックなどとも言われ、コロナ禍の供給制約から顕著な上昇傾向にありましたが、ここにきて更に加速しています。このまま建材の高止まりが続けば、設備投資の延期を図る企業が増え、景気の重荷になると紙面は指摘しています。

参考


東京製鉄は22日、建設用鋼材の価格を全品種(H形鋼・ステンレス・合板 etc.)で1トンあたり6~9%引き上げると発表しました。これらは、リーマンショック直前の高騰以来約13年半ぶりの値や、過去最高の値を記録しています。

世界鉄鋼協会によると2020年には世界の鋼材輸出量の約11%をロシアとウクライナが占めています。ウクライナ東部の地域には鉱山と大規模な製鉄所がありますが、操業が停止しています。こうしたことによる供給懸念が強まっています。

ステンレス鋼材の価格は上昇がこのまま続く見通しです。ステンレス鋼の原料であるニッケルは、ロシアが世界の主要な生産国として1割以上のシェアを占めています。国内最大手の日鉄ステンレスと2位の日本冶金工業は、ニッケルの原材料価格を製品価格に反映することが出来ず、新規のスポット契約を一週間以上ストップさせています。

アルミ相場にも影響を及ぼしています。ロシアは、アルミニウムの世界シェアもを占めますが、アルミニウムの原料であるアルミナの2割をオーストラリアからの輸入に頼っています。オーストラリアのモリソン首相はすでに、ロシア向けのアルミナの禁輸を発表しています。ロシアのアルミ生産が大きな供給制約をうけることが予想されます。

参考 


建材コストは、建築費の約5~6割を占める場合が多く、建設会社や発注企業にとっても負担が大きくなります。そうしたことから設備投資への躊躇が強まると、公共事業の滞りなど幅広い影響がでてしまいそうです。



②「円、6年ぶり121円 歯止めかかりにくく 薄れる輸出恩恵/有事の買い低調」

アメリカFRBによる利上げに対し、金融緩和の方針を変えない日銀と言う、金融政策の違いが円売り・ドル買いを決定づける材料となっています。

過去は、円安になれば輸出が伸び、稼いだドルで円を買い戻すという調整が働きましたが、いまでは海外生産・海外消費の割合が増えたため、円安になったとしても輸出が伸びるとは言いにくくなってきました。

2016年にくらべて円安のブレーキが効かない理由は、輸出の伸びの悪さに加え、インバウンド(訪日外国人)需要のストップもありますが、なにより大きな違いは「原油価格」だといいます。

2016年には原油価格が1バレル30~60ドルでしたが、それが現在では100ドルを超します。円安による輸入コストの増加をもろにくらう事で、貿易収支の赤字拡大につながるような「悪い円安」の側面が強いと紙面は語っています。


③「公示地価、2年ぶり上昇 全国0.6% 在宅勤務で住宅地堅調」

国土交通省が22日発表した2022年1月1日時点の公示地価が、前年のマイナスから一転、0.6%上昇しました。経済が徐々に持ち直していること、在宅勤務の広がりによって、住宅需要が堅調な推移を見せていることがプラス要因となったといいます。

埼玉、千葉、埼玉などの住宅地の価格は顕著に上昇し、さいたま市では1.5%もの上昇を見せました。とくに首都近郊では、子育て世代が東京都から転出が転入を上回ったことなどから、都心中心の生活スタイルからの変化が影響を及ぼしていると考えられます。

一方、商業地に関しては、一都三県を中心に回復傾向にあるものの、都心部(中央区、千代田区、港区)は依然としてマイナス圏に留まっています。オフィスビル仲介大手の三鬼商事によると、新宿・渋谷を加えた都心5区の空室率は2月に6.41%と、供給過剰の目安となる5%を13カ月連続で上回ったそうです。

東京には、来年には更なるオフィスビルの大量供給が見込まれています。このまま供給過多が続けば、市況の押し下げ要因として懸念されます。



④「22年度予算が成立 首相、原油高対策など指示へ」

22日に、参議院本会議で、2022年度の予算案が可決されました。10年連続、過去最大となる107兆5964億円を計上しました。

社会保障費、防衛費も過去最大となりましたが、ここに、ウクライナ侵攻による物価高は考慮されておらず、必要な予算は盛り込まれていません。首相は、4月中には、ガソリンや食料品の価格高騰に対応売るための政策パッケージを作成、参院選前には執行することを目指すと見られます。


⑤「SMBC日興を起訴へ 相場操縦罪で東京地検 監視委、近く告発」

相場操縦のような犯罪に対しては、金商法によって、個人だけでなく法人にたいしても罪が問われます。東京地検特捜部は、証券取引等監視委員会が告発するのを待って、SMBC日興証券にたいして刑事処分を加えるものと見られています。

違法な株取引が、まさに業務の一部として日常的に繰り返されることは、組織側にも、不正を防ぐための管理体制が不十分だったという責任があると言えます。相場操縦罪は、金商法でも最も重い刑罰を科された罪です。市場の公正を担う、大手証券会社がこの罪に問われることは、社会全体におおきな衝撃を与えたのではないでしょうか。



【社説】
安定供給の回復へ電力制度を総点検せよ
交渉停止に臆せず対ロ圧力を

日本経済新聞 
2022/3/22 朝刊一面

①「〈国費解剖〉国の政策、3割成果測れず 事業終了時の目標なし 検証を軽視」

行政事業レビュー」は、国の予算を使った事業の収支や進捗を、外部有識者を交えるなどしてその効果を検証したり改善したりする制度です。日経新聞社がそのレビューシートを点検したところ、事業の終了時における具体的な目標設定があいまいな事業が数百にものぼることが分かったと言います。

具体例でいえば、新車販売におけるEV・ハイブリッド比率100%を目指した補助金事業は、2016年度に開始して累計費用は766億円にも上りますが、毎年度の電動車比率は35%で横ばいです。おまけに、事業の最終年度は2025年に設定されているものの、目標の達成時期を2035年に設定しています。中長期の目標設定は無く、事業が終了すれば検証も行われません。

キャッシュレス決済のポイント還元事業も同様に、2019年10月~2020年6月まで行われ、目標設定は2025年にはキャッシュレス比率を40%に引き上げることでした。2020年度のその費用は6330億円と、当初の予算の2.3倍まで膨れ上がったのにも関わらず、その効果を追跡調査することが出来ません。

2021年度に公表されているシートのうち終了年度を明記しているのは1405事業ですが、そのうち、3割強の444事業について、終了年度時点の成果目標がありませんでした。

定量的な成果の測定ができなければ、予算を使ってどれくらいの成果を出すことが出来たのかが分かりませんから、予算の正当性が不明確になります。乱暴な言い方をすれば、「とりあえずやってみるけれど、その進捗を追う事もなければ、結果に対する責任も負わない」という状態になってもおかしくありません。

行政改革推進本部は「終了時の成果を検証できるよう目標を設定すべきだ」と述べているそうですが、特に明確な指針が設けられる様子はないようです。「予算獲得ありきではなく、目標を巡る議論を深めなければ財政規律は一段と緩む。」と紙面は締めくくります。


②「ロシア、平和条約交渉打ち切り 日本の制裁に反発」

ロシアは、ウクライナ侵攻への制裁に日本が加わったことを「明らかに非友好的な立場をとり、我が国の利益に損害を与えようとした」と反発し、日ロの平和条約締結交渉を拒否すると発表しました。

現在、北方領土はロシアが実効支配しているわけですが、日本国民がビザなく訪れることが出来る「ビザなし交流」の廃止や、北方領土における日本との共同経済活動にむけた話し合いも放棄するということも述べ、その責任が日本にあると一方的に非難しました。

安倍首相とプーチン大統領は2018年に、平和条約締結後には2島の返還すると明記した合意を取り付けていましたが、北方領土の解決や平和条約の締結にむけたこれまでの交渉は、大きく後退することになったと言えるでしょう。


③「マリウポリで降伏要求 ロシア国防省 ウクライナは拒否」

ロシア国防相は、ウクライナ南東部の港湾都市であるマウリポリのウクライナ軍に対して、武器を捨てて降伏する様に要求しました。ウクライナのベレシチューク副首相は「いかなる降伏もあり得ない」と拒否し、ロシア側に伝えたといいます。

マウリポリは、2014年にロシアが併合したクリミア半島と、ロシアが2月に一方的に独立を承認した東部地域を結ぶ位置にあります。ロシアからすればここを奪取すれば、ウクライナ本土侵攻に際しては面での作戦展開が可能になるだけでなく、もし停戦となった際にこのマウリポリを占領しておけば、黒海へとつながった領土を確保できる可能性があります。


そういった意味でマウリポリはロシアにとっては要衝といえる都市で、それゆえか、非常に苛烈な攻撃を加えられていると報道されています。市当局によれば、ロシア軍によって住民が数千人単位でロシアへ連行されたともいい、市民に対しても心理的な圧力を加え続けられている状況です。ロシア軍の包囲によって物資などの補給も極めて厳しいな状況にあるでしょうし、市民の人権が深刻に脅かされていることが想像に難くなく、とても胸が痛いです。


④「政府、初の電力逼迫警報 東電管内、家庭・企業に節電要請」

経済産業省は21日、東京電力管内の電力需給が22日に極めて逼迫する恐れがあるとして「電力需給逼迫警報」を出し、一般家庭や企業に節電を呼びかけました。

16日の地震によって火力発電所が停止して未復旧であることに加え、気温の低下による電力需要が高まることによって供給がひっ迫する可能性が高まったことによる緊急の呼びかけです。

この警報は、東日本大震災後の2012年に作られて以降、はじめて発令されました。北海道や東北、中部以西の各電力会社からの融通はすでに計画され、顧客企業等へはすでに、そうとう強く節電を要請されているようです。一般家庭でも油断せず、くれぐれも節電をこころがけてもらいたいと思います。


⑤「まん延防止を全面解除」

マンボウが、昨日で全国的に解除されました。自治体によっては感染の再拡大を防止するために独自に対策を継続する。岸田文雄首相は解除後をめぐり「平時への移行期間」と位置づけたといいます。

東京都は感染対策の認証を受けていない店を対象に酒類提供を午後9時で終えるよう呼びかけているといいます


【社説】
IT大手は情報基盤としての責務果たせ
刑罰見直しを実のあるものに

日本経済新聞
2022/3/20 朝刊一面

①「チャートは語る 政府公開データ 開店休業 アクセス不備2割、外の目恐れ未対応」

政府が保有している財政や国土、教育、家計などに関するあらゆる調査結果を一般に公開しているものを「オープンデータ」と言います。欧米では1990年代から取り組みが始まり、データの活用が新しいサービスの開発などに役立ってきました。日本では対応が遅れましたが、2012年ごろから本腰を入れてこうしたオープンデータの充実を図られてきました。

気象情報などのデータを活用した洪水リスク推定の事業であったり、交通量や環境データの活用により、車両の通行規制の合理性を検証するシステム、食品カロリーのデータを利用した健康管理アプリなどの成功事例は、オープンデータを効果的に活用できた成功例で、EUによると、オープンデータが生み出す経済価値は2025年には最大で44兆円ほどにも上ると予測されています。

ころが日本では、データの収集に関してはスピーディに進められたものの、質より量を優先してしまった結果、管理がおろそかになり、諸々の問題が発生しているようです。「DATA.GO.JP」には約2万8千件に及ぶデータが一か所に集積され、一か所から、誰でもアクセスできるというのが利点でしたが、そのうち5,600件にはアクセスが出来ないという事態が起きています。これは全体の2割強となり、特に、厚生労働省では約45%、公正取引委員会では38%にも上ることが分かりました。

利用者からすれば、プログラムで自動処理できるように形式を整えて公開した方が、データの活用がはかどるのに、9割がPDFなどの自動処理しにくいデータ形式で公開されていたり、省庁が勝手にデータの削除やURLの変更を行うことで、利用者側が手動でメンテナンスしなければならないなど、データソースを社会経済の発展に活かそうという積極的な姿勢は見られない状況と言えます。

オープンデータの担当者よりも、実際にデータを収集する現場の方が立場が強いことが原因のひとつに挙げられそうです。約4割の地方自治体では、オープンデータを扱う職員すらいないといいます。不備や間違いがあった場合の批判や、不正・課題の追及をされることに対し萎縮しているとう側面から、デメリットの方を重く見られていることも足取りの重さに繋がっています。地方行政の担い手には、しっかりとデータの必要性を理解し、予算を割くことが求められます。


②「ウクライナ避難民、1000万人迫る 国民の5人に1人 大統領、ロシアに和平協議促す」

国連機関によると、ウクライナ国内で避難生活を強いられている住民が650万人に上り、海外への避難民を合わせると、総人口の5人に1人の1,000万人に迫る数字となっています。

南東部のマウリポリでは、包囲を展開していたロシア軍が中心部へ侵入、市街戦に発展したと報じられ、キエフでは民間人60人を含む222人の死亡が発表されています。ロシアとの交渉が長引けば、両国の被害は広がるばかりですが、停戦交渉ではお互いの主張の隔たりは大きいままです。ゼレンスキー大統領はたびたび対話をよびかけますが、まだ首脳同士の直接協議の見通しはありません。プーチン大統領のねらいは消耗戦に持ち込んで、ウクライナ軍ア国民の心をそぐ点にあるという見方もあります。


③「日印、力での変更許さず 首脳会談 ウクライナ「深刻な懸念」」

岸田首相は19日、インドを訪問しモディ首相と会談をおこないました。日本がインドに対しての5兆円の投資を行うことと、世界の人道危機に対して、国際法にのっとった紛争解決の必要性を打ち出した日印共同声明が発表されましたが、ウクライナ、ロシアに対して直接言及することはなく、日印の立場の違いを浮き彫りにしました。

ウクライナ情勢に対して国連安全保障委理事会でのロシアに対する非難決議の採決を棄権したインドは、いまのところ経済制裁にも参加を表明しておらず、中国とならんで、制裁の抜け穴になることが懸念されています。

旧ソ連時代から、密接な軍事協力を継続してきたインドとロシアの関係性を切り崩すことはなかなか難しいとみて良いかもしれません。インドと中国との関係性も見過ごせないファクターです。インドと中国は、2020年に国境争いが起こり、いまでもお互い10万人を超える兵を配備していると見られてます。インドは、日米豪印の枠組み『Quad』(クアッド)によって中国の海洋進出に注意を向けていますが、ロシアとの結びつきを強くすれば、陸上において南北から中国を挟み込んで抑制できるという目算もあるようです。


④「中古車値下がり、最高値から一転 ロシア向け輸出急減で」

今年2月に最高値を記録した中古車市場でしたが、最大の輸出先であるロシア向けが禁輸によって急したことで、需給がゆるみ、相場が下がった模様です。中古車市場が安くなれば、新車の価格も下がる可能性があります。半導体不足による減産の影響で、新車価格はこのところ高止まりを続けていましたが、ここにきて転換点となるかもしれません。


【社説】
与党は選挙のたびに給付金を配るのか
ヒアリの国内定着を阻止せよ

日本経済新聞
2022/3/19 朝刊 一面

①「原発防衛、軍事攻撃も想定 
政府、自衛隊活用を検討 安保戦略に反映へ」

ロシアがウクライナに侵攻し、稼働中のザポロージェ原発やチェルノブイリ原発はを占拠したことは、世界に衝撃を与えました。それが原発を明確な攻撃目標としたというわけではなく、インフラである発電所として抑えにかかったのだと仮定しても、現実的に原子炉を人質にとられたことは

これまで政府は原発の安全確保に関しては、地震や津波などの自然災害や、テロによる標的となることしか想定してこず、そうした危険に対しては、警察や海上保安庁が警戒するとされてきました。しかし今回の出来事をうけ、原発は軍事作戦の対象となり得るという危機がはっきりと輪郭を帯びました。政府は自衛隊を活用した警戒網を検討し、迎撃ミサイルや、平時からの警護といった対策を国家安全戦略に反映させる方針です。

弾道ミサイルの場合は迎撃ミサイルが通用しますが、極超音速ミサイルでの攻撃に対する反撃能力を備えることで抑止するのが通説です。原発防衛の議論の先には
「敵基地攻撃能力」の保有というトピックが存在しますから、そうした面で議論に制約が必要かもしれません。

奇しくもウクライナ危機によるロシアへの経済制裁の影響で、原油や天然ガスといったエネルギー資源の価格上昇が起こり、それによって原発が、火力発電を補完する選択肢としての存在感を更に増したとすれば、なんともいえない皮肉を秘めている気がします。

原子力発電所というものは、それだけリスクをはらんだものである以上、その安全に対する計り知れないほどの配慮が必要なのだという事も改めて認識させられます。


②「複合危機下の米利上げ(中)難度増すインフレ退治 供給ショック、政策後手に」

コロナによるサプライチェーンの停滞、供給制約などのコスト高によるインフレが昨年比で8%ちかくなるという事態をうけ、FRBは金融引き締めでインフレを抑えようとしていました。そこへウクライナ危機が加わり、さらに世界のインフレ率上昇に拍車をかけました。

「スタグフレーション(景気停滞とインフレの共存)」を避けなければいけません。そもそも物価高によるインフレに対しては金利の引き上げの効果は定かではありません。企業はコストを価格転嫁せざるを得なくなり、結局、負担は消費者へとしわ寄せがいきます。物価高によって賃金上昇の圧力となれば、企業はそれ以上に値上げを行わなければならず、価格転嫁は利上げによっても加速される、、といのが悪いシナリオです。。

紙面は、「中銀任せのインフレ根治には限界がある。危機に強い供給網の構築には、国際協調の立て直しや経済安全保障の再考が第一歩だ。」と締めくくっています。


③「習氏「ロシア制裁反対」 中国声明、軍事支援触れず 米中首脳協議」
G7、24日に首脳会議 岸田首相も参加で調整
ゼレンスキー氏、23日に国会演説 オンラインで

バイデン大統領と習近平大統領は2021年の11月以来に直接の電話協議をおこないました。アメリカは、中国がロシアに対して、経済・軍事支援を行うことへの懸念をたびたび示しており、今回は初めてそれを直接伝えるかたちになりました。

対する中国は、あくまでも制裁に対しては否定的な考えを示し、「全方位、無差別の制裁で被害を受けるのは一般庶民だ」と述べました。そもそも侵略をゆるしてしまったのはNATOの過度な拡大が原因といえる側面もあります。もともと貧困層の多いロシアで、国富をもたらしたプーチン氏が強い支持をうけている以上、欧米の制裁によって国民を苦しめれば、むしろプーチン氏の独裁を助長する可能性も否定できません。そういった意味で、中国がロシアの立場を支持することについては一定の理屈が通っていることも事実です。

しかし、世界が協調してロシアの侵略をとめなければならない中、中国が制裁の抜け穴になってしまえば、戦争の長期化を招きかねません。どんな理由があれ、クリミア半島や東部地域を通り越して全土に対して侵攻し、首都の陥落をねらうプーチン氏の行為は侵略以外の何物でもなく、そこに対しての人道的な言い訳の余地はありません。泥沼化する可能性も出てきたこの戦争に対して決して火に油を注ぐことなく、罪のない市民の人権がおびやかされる事態をなんとしても食い止めるべきだとわたしは考えます。

中国のねらいはやはり、台湾に対するアメリカへのけん制、という点にあったと思います。会談の直前に、原子力空母「遼寧」に台湾海峡を通過させたことや、会談で「台湾問題がうまく処理されなければ、(米中)両国関係に破壊的な影響を及ぼす恐れがある」と強い言葉で警告したことなどからも、台湾への介入を決して許さないという、強固な意志を感じさせられます。

 ↓ ぼくの大好きな豊島晋作キャスターの番組ですが、去年10月の配信ですが、見ごたえのある内容です。台湾有事の可能性について。少なくとも、ウクライナ以前の中国とアメリカがどのような関係値にあったのか。気になる方はご覧ください。

https://youtu.be/ycuy61WrEWM

なにしろ、アメリカに対して強いライバル心を燃やす中国には、ある種このウクライナ危機を利用して、
ロシアとの結びつきを強めることも含め、経済、金融の面でアジア圏、そして世界の覇権へ近づく、、そのための思惑が必ずあるはずです。そこに対する先手をどのように打つかが、アメリカには求められるはずです。

そして日本自身も、中国、台湾と至近距離にいる以上は、アメリカに右へ倣えだけで国益を防衛できるとは言えないでしょう。どのようにすれば中国との相互依存を高められるのか。常に考え続けなければいけません。


【社説】
FRBはインフレ抑制へ周到な利上げを
裁判官罷免に潜む危うさ

日本経済新聞
2022/3/19 朝刊一面

①「複合危機下の米利上げ(上) マネー収縮、世界に試練 世界の債務が2年で43兆ドル増 始まる逆回転、新興国打撃」
②「米、ゼロ金利解除 0.25%利上げ」

FRBはコロナによるダメージから企業を守るため、ゼロ金利と量的緩和の二本柱を導入することで、危機に対応してきました。その緩和マネーがテコの原理のように働いて、世界中の財政出動や企業融資を拡大化させたと紙面は指摘しています。

コロナ前の2020年3月にくらべ、FRBの資産残高(国債の買い入れ=マネーの流通)は4兆ドルから9兆ドルまで膨れ上がりました。政府、企業、家計を合わせた世界の債務残高は20年3月末に比べ、260兆ドルから、303兆ドルへと43兆ドルも増加しているのです。

そんな中ついに、FRBの緩和政策が終了し、テーパリングが始まります。ゼロ金利が解除され、今月末には今年7回行われる予定である、利上げの一回目が実行されることになります。流れ込んだマネーが巻き戻されるわけですから、過大債務の国や企業には、膨らんだ債務に対する利払いの負担が重くなります。信用力の比較的低い企業の発行する低格付け債の債券価格は低下し、米国債よりも約4%も高い利回りで取引されているといいます。

新興国の資本流出は特に深刻となります。スリランカは外貨準備が急減したため、自国通貨の10%切り下げ(自国通貨を買われやすくする)を行いました。ナイジェリアでもドル不足が起こり、ドルの納税を自国通貨で認める特例を承認するという対応が採られました。

FRBでは、保有資産を減らす(=マネーを引き揚げる)量的引締め(QT)の議論も最終調整に入っているとされ、次回5月末のFOMCには開始の決定がされそうな見込みです。

利上げによって、せっかく堅調な景気や雇用に悪影響があることを心配する声も聞かれるなか、パウエル議長は「軟着陸」に自信を見せています。利上げとQTによる二重の引き締めによって、なんとしてもインフレを抑え込もうという姿勢を鮮明にしてるわけです。

今日の夕方、日銀の黒田総裁は会見であたらめて、緩和政策の方針変更は無いと発言しました。ウクライナ危機に伴う、原油を始めとした資源高によって、国内の物価上昇率が2%程度に引きあがる可能性に触れ「好ましい物価上昇ではない」としつつも、「金融を引き締める必要もないし適切でもない」と改めて緩和路線を強調しました。あくまでコストプッシュによるインフレであり、日銀の考える物価上昇でない以上、緩和を修正する必要がないという考えです。

金利差による円安を許容することにもなり、当面の見通しとしては、円高に振れる要素はあまり無いのではと思いますが、金利上昇によって企業の混乱が起こることを懸念し、リスクオフで円が買われる可能性もあるかもしれません。



③「米中首脳、18日に協議 ロシア・ウクライナ、非武装・中立化なお溝」

ロシアはウクライナの「中立国化」と「軍備制限」については頑なに主張を続けているようです。

対してアメリカは、中国がロシアへの軍事・経済的な支援を行おうとしていることを指摘し、懸念を示しています。18日、バイデン大統領は習近平国家主席との電話協議を行う予定です。その際に、ロシアに対する支援を行わないように求めつつ、もしそうなった場合には「中国はその責任を負う」とはっきり伝えると言いました。

中国が実際に支援を行っているとアメリカが確認し制裁に踏み切れば、いよいよ世界が2つに割れる大きな対立の序章となるかもしれません。話し合いの結果は明日にはニュースになると思うので、心配しつつ待ちたいと思います。


④「宮城・福島で震度6強 新幹線、月内の再開困難」

震度6強を観測した宮城県と福島県では、17日には1人が死亡、160人以上の負傷が発表されました。松野官房長官によれば、当初、4人と発表された死亡者については、3名について、地震との関連がないという事になり、撤回されました。

東北新幹線は車両が脱線したうえに橋脚も損傷しており、JR東日本は3月中の全線再開は困難としています。東北新幹線が一部を除いてすべてストップしているこの状況は、非常にショックですが、レールの逸脱
装置などがしっかり働き、脱線事故の被害が限定的になったことなども分かっています。そうした点で、上越地震の際の教訓が活かされているという声も聞かれます。

各地では断水が起きるなど生活インフラにも影響が出ているとのことですが、なんとか支援が行き届くことを祈ります。


⑤「ウクライナ、衛星データ日本に要請 ロシア軍分析か 提供判断へ情勢見極め」

ウクライナから日本に対して、人工衛星データの提供を求めていることが分かったそうです。

日本では、悪天候でも地表の鮮明な情報を取得できる「合成開口レーダー(SAR、総合2面きょうのことば)」を搭載した衛星を官民それぞれで運用されています。これがロシア軍の動向把握に活用できる可能性があるわけですが、軍事作戦を左右するほどのデータを提供できることになれば、戦争への関与が強まるという考え方もできます。提供の可否はウクライナの情勢を見極めた上で政治判断となるそうです。


【社説】
重点措置解除で経済活動の着実な再開を
新幹線と電力の耐震性万全に

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